Vol.04 Timescape
CONCEPT
OVERVIEW
第4回
TIME SCAPE 時間に触れる
- 企画建築家
- 内藤 廣
- コラボレーター
- アルバロ・カシネリ、石川正俊
- 開催期間
- 2006年7月13日(木)~7月28日(金)
インスタレーションについて 内藤 廣
空間言語だけでは不可能な、その裏にある深層をカシネリさんの作品は表現しています。われわれの感覚は、時計の刻む方向の時間しか体験出来ません。通常、われわれはそれを意識しないで暮らしています。ところが、カシネリさんの作品は、最新のテクノロジーを使って、その感覚をいとも簡単にひっくり返してしまいます。作品を通して「時間に触れる」ことが出来るのです。当たり前の風景が変容し、見たこともない世界が露わにされます。そこに時間の手触りのようなものを感じていただきたいと思います。インスタレーションの役割は、映写される空間を作品の意図に沿って加速させることです。映像を体験する設えを空間として創り出すわけです。新しい体験には新しい空間が必要です。身体感覚を不安定な状態にし、時間と空間との境目を怪しいものにすること。そのことによって作品の意図がより明確になるような空間を考えました。この空間で時間に触って下さい。
時空間体験の回廊 川向正人
Okamura Design Space Rの野心的な試みは、毎回、展示会場となる「ショールーム」にそなわる空間特性との闘いである。
使用前の、傷ひとつない最高の状態で展示されるという意味で、ここは、すべての展示品がある状態から変化しない、時間が捨象された空間である。しかも、どの展示品も固有の背景をもたず孤立して置かれる。たとえばテーブルとチェアのように機能的関係が成立する場合を除いて、隣り合う家具同士にも、関係が成り立っていない。
時間と空間で織り成されるアウラのない世界。この点で、「ショールーム」はアウラの喪失が極限に達した現代社会を象徴している。「ショールーム」を会場とする理由はここにあり、アウラなき現代社会における芸術表現に新たな地平を切り開くことが、われわれの目標である。
内藤廣は、「ショールーム」が時間の捨象された空間であることに着目した。もともと彼は、「時間の厚み」「積み重ねられた時間の層」が文化の豊かさだと主張してきた建築家である。
「クロノス・プロジェクター」を開発した石川正俊+アルバロ・カシネリとの協働によって、彼の主張が、いつもの建築作品ではなくインタラクティブなインスタレーションとして体験可能になった。「時空間の膜(spatio-temporal membrane)」は、まさに「積み重ねられた時間の層」である。膜を押し込むことによって時間の層を移動する体験が来訪者に与えたものは、驚きをこえてショックに近いものであった。
だが、「時空間の膜」を内包する装置を単独で「ショールーム」に置くだけでは、体験の効果が不確かであった。そこで効果を確かなものとするために、内藤とカシネリは、回廊のような建築空間をつくり、さまざまな映像をともなう「時空間の膜」を、アート・ギャラリーのように回廊の壁面に並べた。回廊を移動しながら来訪者は「時空間の膜」を押し込む行為を繰り返して、映像変化に差異を見出しつつ次第に「時間に触れる」という事の本質理解に至るだろうと、彼らは考えたのである。
内藤廣(ないとう ひろし)
1950年神奈川県生まれ。1976年 早稲田大学大学院修了。フェルナンド・イゲーラス建築設計事務所、菊竹清訓建築設計事務所を経て、1981年内藤廣建築設計事務所を設立。2001-11年東京大学にて教授・副学長を歴任。2023年4月より多摩美術大学学長。主な作品に「海の博物館」、「牧野富太郎記念館」、「島根県芸術文化センター」、「高田松原津波復興祈念公園 国営追悼・祈念施設」、「東京メトロ銀座線渋谷駅」、「紀尾井清堂」などがある。
アルバロ・カシネリ(Alvaro Cassinelli)
アーティスト、研究者。現在、School of Creative Media(香港)の准教授であり、Augmented Materiality Labのディレクターである。自身の作品や研究をサポートするカスタム・テクノロジーを制作している。第9回文化庁メディア芸術祭大賞、第13回文化庁メディア芸術祭優秀賞、アルス・エレクトロニカ名誉賞、NISSAN Innovative Award(2010)、Laval Virtual(2011)Jury Grand Prizeなどを受賞。www.alvarocassinelli.com
石川正俊(いしかわ まさとし)
1954年茨城県生まれ。1979年東京大学大学院修了。通商産業省工業技術院を経て、東京大学工学系研究科、情報理工学系研究科教授、理事・副学長、情報理工学系研究科長等を歴任。2022年東京理科大学学長に就任。専門は、システム情報学。センサ工学, ロボット工学, 超並列・超高速ビジョン, 超高速知能ロボット, ダイナミックインタラクション,等、人を超える知能システムの研究に従事。
©内藤 廣 ©アルバロ・カシネリ ©石川正俊




