OKAMURA
DESIGN SPACE
-R

GREETING

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コロナ禍のために2年ほど延期してきた第18回オカムラデザインスペースR(ODS-R)展を、今年は『Tamping Earth -オフィス空間にあらわれる土の実験劇場』のタイトルで、感染防止に努めつつ開催する運びとなりましたので、ご案内申し上げます。
本展は毎回、「企画建築家」を選び、建築以外の領域の表現者との「協働」の形で、「いま最も関心のある、だが建築だけでは達成できない空間創生」に挑戦していただきます。
現在、建築を含むデザイン界では、生態系全体の未来を見据えつつ、急速に自然系素材の再評価が進んでいます。この素材の見直しには、どういう技術・方法を使い、どういう形状・機能を与えて空間化するかを明確に把握することが求められます。
単なる造形で終わらせず、新たな空間・環境の形成素材とするには、人間を中心に置いて素材(技術)ー人間ー空間の関係で考えなければなりません。課題を「ワークショップを伴いながら素材(技術)ー人間ー空間の関係で考える」ことが、ODS-Rが一貫して提案し続けてきた内容でもあります。

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今回、着目する素材は土です。企画建築家として、版築という素材・技術を用いて、世界的なネットワークで新たな人間環境のあり方に取り組んでいる齊藤正氏を迎えました。
そして、齊藤氏の指名によって、本広克行氏の率いる映像・演劇集団「本広組Creative Salon FOE」との協働が、「オフィス空間にあらわれる土の実験劇場」として実現することになりました。ご両人によれば、版築で3次元的に構成される実験劇場を舞台にして、会期中の火・水・木曜日に、新作の演劇を完成させる様子をお見せしたいとのことです。
なお、ウェブ上に本展の特設サイトを設けて、コロナ対策としての入場制限と予約方法などの詳しい情報も、そちらからお伝えします。ご来場をお待ち申し上げます。

(企画実行委員長/川向正人)

CONCEPT

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建築家Architect(architekton)という言葉は、アルケーをテクトニックするという意味で、根源を技術的に/美学的に表現する者という言葉である。「アルケー(根源)は、土・水・火・空気の4大リゾマータや数である。」という説があるが、今回の展示は土がそのアルケーであると仮定して行われる。
土は、古来より建築材料として広く取り入れられてきた。日本においてもその歴史は古く、寺社仏閣などの古典的な建築の壁や塀などに多く用いられてきた。
原始の時代、人類が洞窟生活から抜け出し、建築らしきことをはじめたときに、最初に手にしたのが土塊である。道具を使って建築をつくるまでには、それから随分時間を要する。すなわち、建築のアルケーは土であるという仮説である。

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版築は、土に硬化材を混ぜて突き固めたものであり、今日でも世界中で用いられている。日本では、耐震性の問題から版築が用いられることは少なくなっているが、最近、それが見直されはじめている。鉄筋コンクリート建築に信頼を寄せる我が国でも鉄筋爆裂問題が浮上するとともに、無筋コンクリートが検討されはじめたのだ。欧米では、無筋コンクリートの需要が拡大し、同時に版築を見直す動きが活発になっている。
版築は、原料が土であることから、現地の土を使えば、輸送マイレージが無いこと、何度も再構築が可能なこと、硬化材として使用するセメントやフライアッシュがコンクリートに比べて格段に少なく済むことから、サスティナブルな材料として再び注目を集めはじめている。

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人は自然界からヒントをもらい、その形からアフォーダンスを選択することで建築や道具を生み出した。それは次第に、それらしきものを見立てるということに転じ、空間的な想像力を身につけた。
ここで行われる演劇やダンスは、アフォーダンスや見立ての理論で成り立っている。身体が求める高さに合うものが椅子となり、また机となる。
本広克行氏が若きクリエイターを育てるためにつくった、本広組クリエイティブサロンが中心となり、都市のオフィス空間に現れた版築の空間を、劇場に変えていく。
本来、演劇は出来上がった完成作品を劇場で見るのが一般的だが、ここでは舞台稽古をしながら舞台芸術をアッセンブルとして組み立てていく様を鑑賞することができる。

建築家
齊藤 正 / Tadashi Saito

齊藤 正

略歴

1965
香川県生まれ
1988
近畿大学工学部卒業
1989-1992
株式会社栗生総合計画事務所 勤務
1992
齊藤正轂工房一級建築士事務所 設立
2000-
近畿大学工学部非常勤講師
2005
APECアーキテクト 登録
2007
事務所名を株式会社齊藤正轂工房に改称

オンラインサロン
本広組Creative Salon FOE

齊藤 正

本広組Creative Salon FOE(Forest of Entertainment)は、2020年9月に開設された、映画監督の本広克行が主催するクリエイティブサロンです。プロを目指す役者、クリエイター、映画制作に興味を持つ会社員や弁護士等、年齢や経歴も様々なメンバー約100名で構成されています。勉強会での学び、本読みや上映会等での体験、監督やメン バーとの繋がり、ショートムービーや⻑編映画制作の実践を通してプロの現場で活躍できるチャンスに溢れるコミュニティです。
【SNS】
▶Facebook https://www.facebook.com/mothirogumifoe
▶Twitter https://twitter.com/mot_foe
▶Instagram https://instagram.com/mot_foe
▶OFFICIAL SITE https://foe.motohiro.com/

脚本家・演出家・東京タンバリン主宰
高井 浩子 / Hiroko Takai

齊藤 正

1995年劇団東京タンバリンを旗揚げし、劇作家、演出家としての活動を開始。「人間の機微を描きだす」オーソドックスな作品を大胆な演出で常に成⻑し続ける見せ方のこだわりは評価が高い。講師としてENBUゼミナール、札幌や広 島などの地方でも活動。近年では和をモチーフに輪を広げようと「わのわ」企画を東京国立博物館や香川県玉藻公園 披雲閣など重要文化財の茶室で上演。2019年にはパリ日本文化会館で上演。

振付家・ダンサー・ニブロール主宰
矢内原 美邦 / Mikuni Yanaihara

齊藤 正

大学で舞踊を専攻、在学中にNHK賞、特別賞など数々の賞 を受賞。日常の身ぶりをモチーフに現代の空虚さや危うさ をドライに提示するその独特の振付けは国内外での評価も 高く、身体と真正面から向き合っている数少ない振付家のひとりと言える。ミクニヤナイハラプロジェクトでは演劇にも挑戦し、ジャンルを問わないその活動はニブロールのみならず、多数のアーティストとコラボレーションするなど世界中を舞台に活躍中。2015年文化庁文化交流大使として東南アジア諸国に派遣される。

受賞歴
2002 「ランコントル・コレグラフィック・アンテルナ ショナル・ドゥ・セーヌ・サン・ドニ (旧バニョレ国際振付賞)ナショナル協議員賞」受賞
2007 第1回日本ダンスフォーラム賞優秀賞受賞
2010 シェクスピア・コンペ優秀賞受賞『前向き!タイ モン』
2012 第56回岸田國士戯曲賞受賞『前向き!タイモン』 2012 横浜市文化芸術奨励賞受賞

開催内容・スケジュール/演目紹介

■シンポジウム
「土・アフォーダンス・見立て」
7月28日(木) 17:00〜19:00(定員制)
パネラー: 齊藤正 高井浩子 矢内原美邦 アンカーマン: 川向正人

■公開稽古&パフォーマンス
演劇 Fabrica[4.0.1]
二次元の文字情報が、役者と演出によって立体的に組み上げられていく・・・役者の組み合 わせによって化学反応を起こし、作品は変化を見せる。演劇作品がつくられる過程は、まさに「実験」といえよう。 演出・本広克行、脚本・高井浩子がタッグを組み、2007〜2008年にかけて上演された演劇プロジェクト「Fabrica」シリーズの最新作が、今年誕生しようとしている。土の版築の中で新作「Fabrica4.0.1」が組み上げられていく様子をありのままにディスプレー。是非お立ち寄りください。

7月19日(火)26日(火)8月2日(火)4日(木) 14:00〜16:00
舞台稽古を観客を入れながら行い、演劇を組み立てる。
脚本家:高井浩子(東京タンバリン) 総合演出:本広組Creative Salon 演出部

ダンス Nibroll「汚れた手」
汚れた手を洗う日々、水に流れるようにあらゆる記憶が消失していく。 世界中でどれだけの時間と場所が失われてきただろう。 その失われたすべてを言葉にはできない。 直面した恐れや震えが、体の中で逆流を始める。 経験した時間を私たちはこのパフォーマンスを通してもう一度体験する。 それぞれの記憶は幾重もの層となり、沈み、浮かびあがり、また重なり、 私たちは失われた時間をやりなおして身体に刻印する。 いま、場所や記憶を定位する表現はいったいどんな意味を持つのだろうか?

稽古 7月27日(水)8月3日(水)5日(金) 13:00〜16:00
上演 8月5日(金) 16:00〜17:00
振付:矢内原美邦 映像:高橋啓祐 音楽:SKANK 出演:小川衣美 大熊聡美 上村有紀

映画 FOE作品特別上映
昨今の映像配信サービスの普及により、映画館で鑑賞するものだけが”映画”ではなくなってきた。自宅や電車の中が”映画館”となり、小さなスマートフォンの画面で、映画を楽しむことができる時代。 いっぽうで名作『ニュー・シネマ・パラダイス』に描かれたような、建築物そのものがスクリーンになり、そこに投影される映画を見つめる人たちがいる空間もまた”映画館”だったのかもしれない。 「本広組Creative Salon FOE」ではこれまでシカゴ日本映画クリエィティブ、さぬき映画祭、 愛媛国際映画祭、八王子short film映画祭といった数々の映画祭で上映、受賞。そんな「本広 組Creative Salon FOE」がこれまでに制作した作品・新作を版築のスクリーンに特別上映。

7月20日(水)21日(木)28日(木)8月1日(月) 13:00〜16:00
制作:本広組Creative Salon FOE

*シンポジウム、公開稽古&パフォーマンス 入場無料/定員・予約制
OKAMURA Design Space R サイト内 イベント参加予約サイト

開催期間
2022年7月19日(火)〜8月5日(金)10:00〜17:00(土曜日・日曜日は休館)
会 場
オカムラ ガーデンコートショールーム
〒102-0094東京都千代田区紀尾井町4−1
ニューオータニ・ガーデンコート3F
Tel : 03−5276−2001
入場料
入場無料/イベント定員・予約制
*イベント開催時間外は、どなたでもご来場いただけます。但し、会場内の混雑状況により、入場をお待ちいただくことがあります。
主 催
株式会社オカムラ
後 援
日本建築家協会、日本建築美術工芸協会、
東京インテリアプランナー協会
協 賛
株式会社エステック
企 画
OKAMURA Design Space R 企画実行委員会
委員⻑:川向正人(建築史家、建築評論家)
企画委員:芦原太郎(建築家)/北川原温(建築家)/内藤廣(建築家)/中村雅行(株式会社オカムラ 代表取締役 社⻑執行役員)